エコロジーという名の病が人類に蔓延した。
「地球に優しく、されど快適に」
買収された学者と、そのパトロンであった企業は、それが可能と謳った。
論理武装されたエコロジー商品はウソをついていなかったが、不都合な側面には口を噤んでいた。
ミスリードされ、それらの商品を贖うことに喜びを見出す人々。
「地球に優しく、されど快適に」
実際には、その時点の人類の科学力と認識では不可能なことだった。
多くのエコロジー商品は、より多くの資源とエネルギーを消費し、後進諸国に対する搾取が進んだ。
後進諸国の人々は生活を成り立たせるために、自らを取り巻く環境を悪化させていくほかはなかった。
それしか道がなかったから。
警告する者もいた。
しかし、エコ商品で潤った巨大資本が、その口を塞いだ。
先進諸国で、人々が喜んでエコ商品に手を出すとき、地球全体ではダメージの方が上回っていった。
そんな、ある意味文明の絶頂期において、ポールシフトが発生した。
地軸が傾き、大地震や津波が都市を破壊し、温帯が寒帯に変わった。
それはまるで地球が身震いしたかのごとく。
害虫を身体から払い落とすがごとく。
人類はその数を大幅に減らしたが、生き残りはもう環境に配慮する、偽の余裕を持たなかった。
過酷な環境で生き残るため、残存した科学技術を駆使した。
ありったけのエネルギーを使い、都合の良いように生物を改変した。
人類の総数は減ったが、生態系を初めとする地球の仕組みは、さらに激変していった。
この後、何が起こるかは誰にも分からなかった。
人類は生き残るために、予測不能の道を突き進んでいくしかなかった。
人間。
それを地球はまだ捨てられないでいる。
なんとか参戦だけは果たしたという体……。
1 件のコメント:
素直でわかりやすかったですよ~。
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